歯周治療では、まず初期病変を確実に見つけることが重要です。
初期の歯周病は、適切なプラークコントロールを習慣化することで治ります。進行した歯周病の治療でも、患者さん自身がブラッシングや適切な歯間部の清掃方法を身に付け、習慣化することが何よりも効果的です。
質の高い歯周基本治療
歯周炎が疑われる場合には、適切な歯周組織検査とエックス線検査で、歯周組織の状態を克明に調べますが、歯周組織検査は簡単そうに見えて実はかなりの熟練が必要で、時間もかかるため、多くの場合、初期病変は見つられることなく、スルーされています。こうして進行して初めて治療することになるので、歯周病は「治りにくい病気」「治らない病気」と思われているのです。
歯周基本治療は、患者さん自身のプラークコントロールとともに、歯肉縁下のプラークコントロールが主な治療です。歯肉縁下のプラークコントロールは、1本1本の歯の複雑な歯根面の探知とともに、起炎性プラークや慢性炎症性組織、プラークの住処となる歯石を丹念に除去して組織の反応を期待する根気のいる処置です。
この歯周基本治療を担っているのが、歯科衛生士です。
ヘルスケア診療で、歯科衛生士の役割が大きいのは、このためです。
歯周治療の専門家は、失われた歯周組織を再生させる再生療法や審美性を回復するための歯周形成外科の習熟を競い、熱心に追究していますので、再生療法や歯周形成外科などの高度な歯周外科が重要な歯周治療だと誤解されがちです。しかし、高度な歯周外科も、歯周基本治療のベースなくしては成り立ちません。
●歯周病は治らない病気?
歯周病は、国民の80%が罹患していると言われる国民病です。しかし、その多くは歯肉の所見や初期中等度の歯周病で、適切なケアによって確実に予防することが可能です。少し進行してしまった場合でも、適切な医療によって確実に治すことのできる病気です。ところが残念なことに、こうした初期中等度の歯周病は、適切に治療されていません。初期のうちは見過ごされ、ほったらかされ、重症化して歯を支える骨が失われてから「本格的」な歯周治療を始めているというのが実態です。歯周治療では、まず初期病変を確実に見つけることが重要です。適切なプラークコントロールを習慣化することで、多くの初期病変はコントロール可能です。その意味で、患者がブラッシングや適切な歯間部の清掃方法を身に付け、習慣化することが何よりも効果的です。歯周炎が疑われる場合には、適切な歯周組織検査とエックス線検査で、歯周組織の状態を克明に調べますが、この検査はある程度の熟練が必要で、時間もかかるため、多くの場合、初期病変は見つられることなく、スルーしてしまっています。こうして進行して初めて治療することになるので、歯周病は「治りにくい病気」「治らない病気」と思われているのです。
●歯周病の治療原理はプラークコントロール
歯周炎は、歯肉溝内に出血が生じてバイオフィルムの病原性が劇的に高まることから始まります。歯肉縁下の細菌叢は、主に嫌気性菌からなる生態系を成していますが、ここに歯ぐきからの出血が加わると、細菌の栄養・共生関係は大きな影響を受け、徐々に細菌相が生態学的にシフトします。それに対する歯周組織の免疫反応によって、歯周組織は自分の組織を破壊しはじめます。この組織破壊には、人それぞれの免疫がさまざまな働きをします。このため、喫煙、糖尿、ブラキシズムなど多様な要因が、歯周炎を悪化させる因子として知られています。こうして歯周炎の重症化がもたらされるのですが、この歯周病の成り立ちを理解すれば、その治療原理がプラークコントロールであることは明らかです。このプラークコントロールを目的にした歯周治療が、歯周基本治療と名付けられています。 進行した歯周病(6mm以上の歯周ポケットのある人は、30代で4%)は完全な治癒が難しいのですが、それでも適切な維持療法(SPT:サポーティブ・ペリオドンタル・セラピー)を受ければほぼ再発を完全にコントロールできます。この維持療法の原理は、歯周基本治療と同じです。●歯周治療における歯科衛生士の役割
歯周基本治療は、患者さん自身のプラークコントロールとともに、歯肉縁下のプラークコントロールが主な治療です。歯肉縁下のプラークコントロールは、1本1本の歯の複雑な歯根面の探知とともに、起炎性プラークや慢性炎症性組織、プラークの住処となる歯石を丹念に除去して組織の反応を期待する根気のいる処置です。この歯周基本治療を担っているのが、歯科衛生士です。ヘルスケア診療で、歯科衛生士の役割が大きいのは、このためです。 歯周治療の専門家は、失われた歯周組織を再生させる再生療法や審美性を回復するための歯周形成外科の習熟を競い、熱心に追究していますので、再生療法や歯周形成外科などの高度な歯周外科が重要な歯周治療だと誤解されがちです。しかし、高度な歯周外科も、歯周基本治療のベースなくしては成り立ちません。質の高い歯周基本治療
を知るためのオススメ3選
クインテッセンス出版
歯周病の病因論と
歯周治療の考え方
インターアクション社
インターアクション社
質の高い歯周基本治療
関連図書
クインテッセンス出版
経験2年目でもできる!新SRPテクニック
中本知之・西村誠・野村朱美【著】
インターアクション
会員の研究成果(会誌掲載関連論文)
- 山下喜久:唾液細菌叢解析で表す歯周病の進行, ヘルスケア歯科誌,22(1);20-26, 2021
- 秋元秀俊, 藤木省三:原著;一般歯科診療所の初診高齢者の現在歯数と歯周病重症者割合の推移―同一診療所群の連続20年間の診療記録を用いた報告,ヘルスケア歯科誌,22(1);58-64,
- 関野愉:歯周病新分類の臨床的意義と今後の展望,ヘルスケア歯科誌,21(1);6-11, 2020
- 中本知之, 村上瞳:症例報告;患者の生活背景に配慮しながら広範型重度慢性歯周炎を管理している一症例,ヘルスケア歯科誌,19(1);24-33, 2018
- 井上まどか,寺田昌平:症例報告;重度の広範型慢性歯周炎患者に歯周基本治療を行うことで病状安定とQOLの向上へと結びついた症例,ヘルスケア歯科誌,19(1);40-49, 2018
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Hidetoshi Akimoto, Miho Yamada, Tory Naito :Reality and possibility of smoking cessation support and collaborative approach by dental hygienists, Tob. Induc. Dis. 2019;17(Suppl 1):A37
過去のヘルスケアミーティング
- 2024年 歯周基本治療からはじまるヘルスケア診療

- 2020年 歯周病の新分類 「侵襲性」はどこへ行った
質の高い歯周基本治療に役立つオリジナル資材
【患者説明用資材】
- 歯周病予防のための説明補助シート
- パワーポイント版:歯の病気のやさしい説明10〜25
- パワーポイント版:ペリオドントロジー総論
歯周病は、国民の80%が罹患していると言われる国民病です。しかし、その多くは初期中等度の歯周病で、適切なケアによって確実に予防・治療できます。ところが残念なことに、多くの初期中等度の歯周病は、適切に治療されていません。初期のうちは見過ごされ、重症化して歯を支える骨が失われてから「本格的」な歯周治療を始めているのが実態です。
歯周炎は、歯肉溝内に出血が生じてバイオフィルムの病原性が劇的に高まることから始まります。歯肉縁下の細菌叢は、主に嫌気性菌からなる生態系を構成していますが、ここに歯ぐきからの出血が加わると、細菌の栄養・共生関係は大きな影響を受け、徐々に細菌叢が生態学的にシフトします。それに対する歯周組織の免疫反応によって、歯周組織は自分の組織を破壊しはじめます。この組織破壊には、人それぞれの免疫がさまざまな働きをします。さらに喫煙、糖尿、ブラキシズムなど多様な要因が、歯周炎を悪化させる因子として知られています。こうして歯周炎の重症化がもたらされるのですが、この歯周病の成り立ちを理解すれば、その治療原理がプラークコントロールであることは明らかです。このプラークコントロールを目的にした歯周治療が、歯周基本治療です。
進行した歯周病(6mm以上の歯周ポケットのある人は、30代で4%)は完全な治癒が難しいのですが、それでも適切な維持療法(SPT:サポーティブ・ペリオドンタル・セラピー)を定期的に受ければ再発をコントロールできます。この維持療法の原理は、歯周基本治療と同じプラークコントロールです。






